2014年12月12日金曜日

バンザ〜イなしよ!


東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の「映画監督・千葉泰樹特集」前半戦は、『東京の恋人』と『秀子の應援団長』しか見る事ができなかった。
前者は、原節子と三船敏郎の組み合わせで、後者はキネマ殉報のオールタイム・ベスト映画遺産 日本映画男優・女優100で女優部門第1位に輝いた高峰秀子主演の明朗野球映画。
この画像は『秀子の應援団長』のラストシーン、まだ少女時代の高峰秀子ちゃんが、無人の野球場でひとりぼっちで万歳三唱する姿からの連想。
1940年制作の映画だから、バンザ〜イナシヨ!なんてギャグは当然のことながら誰も知らないし、2014年現在では逆に古すぎて知らない人が多いかもしれないが、まぁそーゆーもんだと思ってください。

この映画が世に出たのは十五年戦争真っ盛りの時代だから、映画の中で「勝て!勝て!」と連呼するのは戦意高揚の意味合いが多分にあるでしょう。でもそんなに前面に戦時ムードが出ているわけでもないし、この時代の映画監督はあれやこれやで大変だったろうから、軽い感じのアイドル映画としてはまずまず楽しめたなぁと、客席でエンディングを迎えたわけです。
流れからいけば、秀子ちゃんが野球場に駆けつけて、勝て!勝て!と応援歌を歌い、最後には勝利してみんなで万歳三唱でメデタシメデタシよかったねという展開なのに、なぜかこの映画ではそうはならない。家を出るのが遅れた秀子ちゃんが野球場に着いた時は、なんとグラウンドにも観客席にも誰もいない。スコアボードにはまだ得点が表示されているので、試合が終わった直後らしいのはわかる。それなのに、無人。その静寂の中で、観客席に立った秀子ちゃんが、一人で万歳をする場面で映画は唐突に終わってしまう。それまでのテンポと全然違うので、あっけにとられてしまった。
これ、もしかして、威勢のいいかけ声でドカチャカやってても、いずれは破滅して誰もいなくなっちゃうよ〜ん、無邪気にバンザイしてる場合じゃないよ〜ん、みたいな意味合いがこめられているのではないでしょうか?もしボクが当時の映画監督でこの企画を受けたら、たぶんそーゆー意味合いを込めて撮ります。

この映画公開から5年後、この映画の中のような生活はほとんど壊滅してしまうのですが、さらに70年がたとうという今、この道しかないわけでもないのに、いつか来た道に行きかけているなんて、まるで出来の悪い冗談にしか思えません。
今度の日曜日夜には、いろんな所からバンザ〜イの声が聞こえてくるのでしょうが、もし選挙前に報道されているような投票結果になったら、ほんと「バンザ〜イなしよ!」のココロだ〜っ!これ、小沢昭一的ココロの感じです。わからなければ、それでもかまいません。
蛇足ついでに、バンザ〜イなしよ!はコント55号時代の欽ちゃんのギャグです。

蛇足の蛇足。
このラストシーン、もしかして高峰秀子ちゃんのスケジュールと、野球場エキストラとのスケジュールが合わず、やむなく秀子ちゃん一人での万歳シーンになってしまったなんてことはないのだろうか。もしそうなら、今までグダグダ書いたのがバカみたいじゃないかと思えてくる。そんな時は「なんでそーなるの!」と叫んで舞台下手に去っていくしかないね。

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